芳賀・宇都宮LRTでは建設費高騰で批判も受けているが、よくみると随所でコスト削減の工夫がされているので、今回はそれを見ていこう。
まずは、何といっても駅東公園前~峰間の峰町立体だ。構造的に可能なのかという議論もあったが、ここを道路と並行して越えられたことには非常に大きな意味がある。もし構造的に峰町立体を通れないとなったら、迂回する部分は全て軌道敷の用地が必要となる。高い建物が並ぶこの付近で買収は困難で、LRT開業が実現できなかった可能性が高い。
峰町立体を下から見てみる。橋脚はLRTの荷重に耐えられるように補強した跡が見られ、かなり太くなっている。
耐震補強工事?も同時に行われているようだ。
続いて、峰~陽東3丁目付近。写真ではわかりづらいが、よく見るとマンションを避けるように道路及び軌道が左右に曲がっていることが分かる。これにより用地買収の費用削減及び難易度を下げている。
次は平石停留場の東側、新4号交差部だ。
新4号は非常に交通量が多いので当然のように立体交差だが、鬼怒通りとの立体交差があるため、その上を越えると大規模な橋梁が必要になる。
かといって鬼怒通りと併用軌道で立体交差を通過するのは渋滞が酷くなっただろう。
この区間、実際は鬼怒通りの少し南側を通るわけだが、ここの新4号、不思議なことに鬼怒通りの立体の南側も盛土が続いている。LRTはここをボックスで抜ける。まるでLRTが通る部分を用意しておいたかのようだ。
LRTのボックスの右側には市道のボックスが。ここも立体で越えるために大規模な盛土があるようだが、市道の交通量は少なく(今でこそ平石のパークアンドライド駐車場に向かう車があるが)、不思議な構造である。ただ、このおかげで盛土の上を通る橋梁を作らずに済んだ。
なお、LRTの隠れたメリットとして、建設工事の際、軌道工事等一部の特殊な工事を除き、道路工事と大差がなく地元企業が請け負うことができるという点がある。地元に金が落ちて地元経済が潤うということだ。モノレールや地下鉄ではこうはいかないであろう。
また、停留所の構造も非常に簡素で、エスカレーターやエレベーター、改札等を整備しないといけないモノレールや地下鉄とは維持管理コストが比較にならない。
芳賀・宇都宮LRTは最終的に結構高額になってしまったが、このようなメリットを持ったLRTが中規模都市において普及していくことを願いたい。